不器用なシンデレラ
 言われるがまま錠剤を口に放り込まれると、何か柔らかいものが私の唇に当たって、水を流し込まれた。

 ゴクリと喉を鳴らして飲み込むと、この上なく優しい声がした。

「いい子だ」

 よしよしと頭を撫でられる。

 仕草がパパに似ている。

 その優しさに安堵したのか私は意識を手放した。

 
 ⭐


 誰かが歌ってる。

 何だっけ?

 今流行ってる歌手のバラード。

 ああ、RENの声だ。

 低く甘い声で、聴いてると落ち着く。

 テレビとかで聞くのと同じ声。

 ゆっくり目を開けると、ベッドの横に小鳥遊先輩が座ってた。

「・・・・」

 ここは、保健室のベッドだ。
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