不器用なシンデレラ
「さっきの女の先輩は泣いて悲しんでましたけど。それに、私、先輩には興味ないし、ファーストキスは好きな人としたいんでこれで失礼します」

 私は起き上がってベッドから立ち上がる。

「ファーストキスねえ」

 そう呟きながら小鳥遊先輩はペロリと唇を舐める。

 その仕草に男の妖しい色香を感じたのは気のせいだろうか。

「それさっき俺貰っちゃったんだよね」

 しれっとした顔で先輩はとんでもないことを口にする。

「え?ええ~!」

 私が絶叫すると、小鳥遊先輩が手で私の口を押さえる。

「煩いよ。黙らないとセカンドキスしちゃうけどいいの?」 

 小鳥遊先輩の眼光がキラリと光る。

 私が否定の意味を込めてブンブンと首を振ると、彼は悪魔のように微笑んで言った。

「じゃあ、俺のパシリ決定」

「ち、ちょっと、それじゃあ私やられ損じゃないですか!」

 先輩の手を口から外して抗議すると、彼は今度は乾いた笑いを浮かべた。
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