不器用なシンデレラ
 両親に挨拶?

 そんな事したらパパがショットガン持って現れそう。

 普段、私には激甘だけど、怒らせると怖いのだ。

 あまり想像したくない。

「・・れ、蓮」 

 小鳥遊先輩の脅しに負けて何とか名前を口にすると、彼は満足気に微笑んだ。

 そんなやり取りを何年も繰り返し、先輩にピアノを手取り足取り教えてもらい、気づけば目の前には憧れの舞台。

 ピアノを弾く者なら知らない人はいないショパンコンクール。

 もうすぐ私の出番だ。

 でも、身体の震えが止まらない。

「蓮、キスして」

 私がキスをせがむと、彼は私に甘くて優しいキスをする。

 出会ったときはあんなに蓮とのキスを嫌がったのに、今ではなしではいられない。

 もうすっかり私は蓮にどっぷりはまっている。
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