不器用なシンデレラ
 腕を組ながら、本田さんがくくっと笑う。

「は?」

「あいつ、ホント何でも出来過ぎてて人間的な面白みに欠けてたんだよね。女遊びもしないし、先輩としてはそこが心配だったんだけど。杞憂だったみたいだな」

「それって鷹野くんの事ですか?」

「そう。僕はね、ここだけの話、鷹野ともう一度勝負したくてうちの会社に入った。あいつに会うまでは、何でも負け知らずだったんだよ。でも、学力でもテニスでもあいつは僕の上をいくんだ。屈辱だった。いつか負かしてやる。そう思ってたんだけど、昨日のあいつ見てたらそんな気失せたよ」

 本田さんは苦笑する。

 意外だった。

 彼のような明るい人でも理人くんに嫉妬する事あるんだ。

「あいつ、A社では終始営業スマイル全開で、君のミスをカバーしようとしてたよ。あの鷹野がだよ。隣にいるこいつは誰だって思ったね。そんなあいつ見てたら、自分が小さく思えたんだ。最初から勝負にもならなかった」
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