不器用なシンデレラ

「今日は顔はひどいけど明るいじゃない。昨日あの後良いことでもあったの？」

　長谷部さんが私の事を気にしてたのか話しかけてきた。

「はい。久しぶりに幼馴染みと家族ぐるみで食事をしたんです」

「そう、良かったわね。・・・幼馴染みか。受注入力一杯あるし今日は頑張ってちょうだい。汚名返上のいい機会よ。ああ
、私の幼馴染みもあなたくらい素直だと苦労しないのにな」

　溜め息混じりの声で長谷部さんがぼやく。

「幼馴染み、近くにいるんですか？」

「とっても近くにね。でもすぐに逃げるのよ。ああ、思い出したらなんだかムカついてきた。ちょっとタバコ吸ってくる。何かあれば喫煙所にいるから」

　ポケットからタバコの入っているかわいい箱を取り出すと、長谷部さんは長くて綺麗な髪をなびかせながら喫煙所の方に歩いていった。

「山下さんって、男に取り入る才能でもあるのかしら？本田さんだってあなたに優しいし。狡いわよね。あなた、うちの課のお荷物なのに。うちの仕事、合ってないと思うわよ。早く辞めちゃえば。鷹野くんだってあなたに足引っ張られて迷惑だと思うわ」