不器用なシンデレラ
 今にも起きて小言を言いそうなのに・・・・。

 祖母の心臓はもう止まっている。

 二度と動かない。

「ごめんね。ずっとおばあちゃん頑張ってたんだね」

 祖母の手を握り締め、頬に当てる。

 私はこの温もりを忘れてはいけない。

 これが最後なのだから。

 たくさん出血して相当苦しんだはずなのに、祖母の死に顔はとても穏やかだった。

「とてもいいお顔で眠ってるの。ここに運ばれて来た時は意識もなかったみたいだから、きっと痛みをあまり感じずに逝けたんじゃないかしら」

 看護婦さんの慰めの言葉に、ただ頷く。

 苦しまなかったのなら、それだけが救いだ。

「祖母を綺麗にして頂いてありがとうございます」

 看護婦さんにお礼を言って、ストレッチャーに乗せられた祖母と一緒に霊安室に向かう。
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