不器用なシンデレラ
「お前新人のくせに全然可愛くないな。俺の出る幕なかったじゃん。こんな可愛い新人の女の子ものにするチャンスだったのに」

 本田さんが私に向かってウィンクしてくる。

 仕事は相当出来ると聞いているが、結構女ったらしらしい。

「男が可愛かったら気持ち悪いでしょ」

 理人くんは冷ややかに反論する。

「山下さん、マニュアルはあくまでも基本だから。厄介な相手だったら課長や他の先輩に任せた方がいい。余計トラブルから」

 何か書類に目を通しながら、理人くんがアドレスしてくれる。

  だが、彼が私を見てくれることはない。

「すみません」

 理人くんが見てくれないのはわかっているけど頭を下げる。

 これで彼に注意されるのは何度目だろう?

 もう両手じゃ数えられなくなってきた。

 きっと彼は何も出来ない私に呆れてるかもしれない。
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