不器用なシンデレラ
7、月だけは知っている
 今日、おばあちゃんは煙となって私の手の届かないところへ逝ってしまった。

 母に祖母の死を知らせたけど、詩音のピアノコンクールが近いという理由で帰国する事はなかった。

 人の命よりコンクールの方が大事なのだろうか。

 私にはあの人達の考えている事がわからない。

 もう家族とは言えない存在。

 血は繋がっていても、今はただの紙キレだけでの繋がりしかない。

 私はこれから1人、生きていかなくてはならない。

 今夜の月の光は綺麗なだけに目にしみる。

 こうして縁側で月を眺めるのも、もうあとわずか・・・・。

 おばあちゃんの家。

 私の育った家。

 たくさん思い出の詰まった家。

 この小さな縁側も、可愛い庭も大好きだった。
< 64 / 358 >

この作品をシェア

pagetop