不器用なシンデレラ
 彼の言葉にムカついた私は声を張り上げた。

「私は多くを望んじゃいけないの!私のせいでパパもおばあちゃんも死んじゃったの。私は幸せになっちゃいけないの!」

「お前は悪くない。小さい頃からおばさんにそう刷り込まれて身動き取れなくなってるだけだ。もっと自分の気持ちに正直になっていいんだ」 
「今すぐ正直になんてなれないよ。もういいの!」

「良くない。そんなの俺が許さない」
 
 理人くんの曇りのない瞳が、私の濁りかけた眼を射抜く。

 彼の身に纏っている空気がいつもと違う。

「・・・理人くん?」

「逃がさない。もう誰にも譲る気はないから」
 
 理人くんの眼の奥がキラリと光った気がした。

 その言葉に彼のどんな思いが込められていたのか私は知らない。

「・・・何の話?」

「花音は知らなくていい。もう黙って」
 
 理人くんが顔を近づけて私に口づける。

「・・・・」

 急な展開についていけない。
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