不器用なシンデレラ
 赤い華が身体中に咲いていた。

 それはこの一晩で理人くんがつけたキスマーク。

 昨夜は、夢中でなにがなんだかわからなかったけど、こんなにたくさんの場所に理人くんはキスしてくれた。

 それは、昨夜理人くんが私を愛してくれた証。

 本当の傷跡みたいにずっと消えなければいいのに。

 きっと一週間もすれば消えてしまう。

 シャワーを浴びて服を着ると、キスマークは綺麗に隠れ、いつもの自分がいた。

 キッチンへ行くと、テーブルの上には私の大好きなフレンチトーストが作って置いてあった。

 そこには理人くんのメモ書き。

 ”ちゃんと食べろよ。残したら承知しないから。”

 相変わらず綺麗な字。

 書いてある伝言も理人くんらしい。

 手を合わせて頂きますをして、トーストを口に運ぶ。

「・・・美味しい」 

 柔らかくて甘さもちょうどよくて、すごく優しい味。
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