不器用なシンデレラ
「そうよね。花音ちゃんみたいな女の子、騙そうとする悪い輩は一杯いるし。荷物が纏まってるなら、今日からでも部屋に運んでいいわよ」

「ありがとうございます。おばさんのおかげで気持ちが楽になりました」 

「困った時はお互い様だもの、ね」

 そう言っておばさんは可愛い花のブーケを私にくれた。

 ピンクの可愛いカーネーションとかすみ草の小さなブーケ。

 カーネーション・・・ああ、そう言えば来月は母の日か。

 母からは相変わらず何の連絡もない。

 私が母にカーネーションを渡す日はもう一生来ないだろう。

 幼稚園の時も小学生の時も、母の日にちなんでプレゼントや作文を作らされたけど、受け取ってもらったこともない。

 愛されていない子供にとっては残酷な日だ。

 おばさんにお礼を言って家に帰ると、すぐに祖母の遺品の整理を始めた。
< 82 / 358 >

この作品をシェア

pagetop