不器用なシンデレラ
 B社に着くと部長さんらしき人とその部下がロビーで待っていた。

「お待たせしてすみません。TAKANOの営業部の山下と申します。こちらが弊社のカタログになります」  

 これで無事に終わった。

 そう思っていた。

 部長さんに腕を捕まれてタクシーに乗せられるまでは。

「あの・・どこへ向かってるんでしょうか?」

「美味しい夕食でも食べながら商談しようか。見ない顔だけど、新人かな?TAKANOの営業には美人な子が多いね」

 小太りの部長さんの手が私の膝にちょっと触れた。

 ビクってとして思わず部長さんを見る。

「・・・・」

 偶然?

 それとも今のってひょっとしてわざと?

 この状況かなりマズいんじゃあ。

 顔からサーッと血の気が引いていく。
< 94 / 358 >

この作品をシェア

pagetop