SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~



結局、―――。


データ、復元出来なかった。


今更ながらに、バックアップの重要性が身に沁みる…。



もうっ、馬鹿だーっ。



病院の帰りに、新しい携帯を購入して。



「亜澄がピンクを選ぶなんて、珍しいな。」


「この色、可愛かったんだもん。」



高い出費だったけど、どうせ長く使うんだもん。


一目惚れしたカラーのスマホを手に、私はにんまりと笑う。



「ほら、にやにやしてないで、アドレス、登録して?」


「はーい。」



仕事関係の連絡先は、大哉から教えてもらい、まずは塾長に現状を連絡した。



「やっぱり、送って行けば良かった。」



しきりに後悔の念を重ねられ、逆に何だか申し訳なくなってしまう。


手が動かせるようになるまで、授業は交代してもらうことにして、私はしばらく受け持っていたクラスの担当を外れることになった。



「パソコンも片手じゃあな…。」


「指を動かせたら、何とかなるんだけどなぁ。」


「まあ、今週いっぱいは安静にしてなきゃね。

どう、―――?

松葉杖、慣れそう?」


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