SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
八木君は部活を引退してからの、夏期講習から入ってきた生徒。
ぐんぐんと成績を上げて、目下偏差値72の難関大学を志望している。
こういう子って、いるんだよね。
スポーツをしてたからか、集中力もある。
カラカラのスポンジがどんどん水分を吸収していくように、彼の成績の上がり方は半端ない。
めきめきと頭角を現してきた、この塾、期待の生徒。
素晴らしい、―――。
「ここ、なんだけど。」
宮沢賢治『永訣の朝』
指された問題集の横には、その解答と解説がされた冊子が無造作に置いてある。
ふと視線を向けると、片方の口角だけを上げて私を見つめる八木君と視線が絡まった。
あれ…?
もしかして、助けてくれたの…?