SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~



「不吉、でいいんですよね?」


「えっ、―――。

ああ、ここね。うん、不穏、だと意味が違うでしょ。

不穏、の意味は?」


「穏やかじゃないこと。」



即答で帰ってくる答えに、確信する。



「じゃあ、不吉、は?」


「よくないことが起こりそうな兆し、そのさま。」


「うん、正解。」



あ、り、が、と。



小さく口を動かして、八木君に合図を送った。



「…。」



ふわりと、彼の瞳が弓なりになったのを見て、私も思わず微笑んだ。



うん、いいよ、―――。


八木君てば、絶対、モテるでしょ。


こういうさりげない優しさって、女の子は嬉しいんだよ。



なーんてね。

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