SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
わかってて、先に足を踏み入れたのは、私。
飛鳥がいない、今なら。
私にも分があるかもしれないって。
奥さんを…。
大哉が奥さんを、愛してないってわかってるから。
もしかしたら、私が飛鳥のいた場所に……。
入り込めるんじゃないかって、期待して。
だけど、無理だった。
初めて大哉が、―――――。
私に触れたあの時に、気付いてしまったんだ。
甘くて、優しくて…。
初めての経験に何度も意識を失いそうになった、あの日の夜。
大哉は私を見なかった。
「亜澄。」って、――――。
声はするのに。
私のことを抱きながら…。
大哉は、一度も私を見ようとしなかった。