SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~



「よかったあ。

何か苦手なんだよね、あの娘。」



わざとらしく、頬杖をつく仕草が白々しい。


俺と亜澄の関係なんて、とっくの昔に気付いてるくせに。


冷めた笑顔を向けても、未紗子は全く動じない。



あの日、――――。



大破した車を運転していたのは、飛鳥で。


それに同乗していたのが、未紗子。


俺の不在中、何故か未紗子は自宅まで押しかけて来ていた。



「ごめんなさい。」



そう泣きじゃくる未紗子を宥めながら、自宅まで送り届けるために飛鳥は車を出した。


免許を取得して間もなかった飛鳥は、居眠り運転の車を避けきれなかった。



飛鳥は、俺のせいで死んだんだ。



そして、――――。


何事もなかったかのように、未紗子は俺の妻に納まった。

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