SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~






「わ、本物の葛西君だっ。」




玄関の扉を開けた瞬間、聞こえてきた、声。


門扉の向こうに立つのは、篠井未紗子と…飛鳥。



「え、何で…。」



篠井がいることにも驚いたけれど、―――。


飛鳥……?


飛鳥が俺を見て、笑っている。



「飛鳥ちゃんの言ってたこと、本当だったんだね。」



背の高い飛鳥を、篠井は嬉しそうに見上げながら。



「…何、どういうこと?」



久し振りに視線を交わした飛鳥に、俺は少し動揺していた。


これがきっかけで、飛鳥はまた家に出入りするようになる。


誰かに間に入ってもらわなきゃ、―――。


俺は飛鳥に寄り添うことすら出来ない臆病者で。


今ならわかるよ、…飛鳥。


なあ、お前もそう思ってたんだろ?


< 265 / 363 >

この作品をシェア

pagetop