SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~


誰もが、―――。


これ以上、飛鳥の悲しむ姿を見たくなかった。


兄妹のように育った俺たちの、たった一人の、妹。


父さんや母さんにとっても、飛鳥は可愛い末っ子の娘で。


妊娠、そして、―――。


18歳の女の子には、重く圧し掛かる現実。


飛鳥は、頑なに相手のカメラマンの名前を明かさなかった。


結局、飛鳥の相手が誰だったのか、知る由もなくて。


そいつを庇っているのか。


たんに、思い出したくもない過去、なのか。


もしかして、―――。


無理やりだったのかもしれないと、華やかな世界にはよくあることなんじゃないかと。


おばさんもこれ以上飛鳥に聞くことは酷だと泣いていたっけ。


飛鳥にはただただ、自分らしく生きてほしいとみんなが願ったんだ。


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