SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
あまりにも早い、玄関のチャイム。
え、まさか、――――。
…大哉だったらどうしよう??
恐る恐るドアを開けて、――。
八木君の姿を確認すると、心底ホッとした自分に複雑な感情が湧き上がる。
「早かったね。もしかして、近くにいたの?」
「一回荷物、置いてから。近くのコンビニにいた。」
「ごめん、遅くなっちゃったね。」
「いいよ、そんなの。
先生がまた逃げたら、面倒くさいなって思っただけ。」
「にっ、逃げないし。」
「あははっ、前科あるくせに。」
ゆっくりと自転車を走らせながら、八木君は前を向いたまま笑い出す。
「また怪我されても、困るし。」
「…っ。」
ここは、何も言い返せ…ないねよ、やっぱり。
何だか悔しくなって、八木君の背中をパシリと叩いて小さく抗ってみた。