SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「何、逃げ出したかったの?」
「そういうんじゃないしっ。」
「真実を知るのが怖いってか。」
ちらりと後ろを振り返った八木君が、何故か嬉しそうに笑うから。
「八木君って、ほんとムカつくよね。」
「ははっ、よく言われる。」
「しばらく元気なかったくせに。」
「先生もだろーっ。」
「…うん…まあ、そうだよね。」
「ほらほら、落ち込まないで。」
「落ち込んでないし。
なんかもうっ、いろいろとムカつくんだよねっ。」
「そう?先生はいつも可愛いよ。」
「はあ?
んなことばっかり言ってないで、ちゃんと運転しなさいよっ。」
「もう、着いたよ。」
「えっ、ここ??」
威圧感のある、大きな門扉。
それをぐるりと囲む高い木塀。
八木君の家はびっくりするくらいのお屋敷で。
「…八木君ちって、お金持ち??」
玄関の前で、今度は怯んだ、私。