SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
怖い人だと…思ってた。
保健室で女の子を襲うなんて、どんな恐ろしい人なんだろうって。
目の前に座る、この男性。
八木君のお兄さんからは、そんなオーラすら見受けられない。
柔らかな物腰に圧倒されて、――――。
私はその姿に、一挙一動、見惚れてしまった。
「こんな遅い時間に申し訳なかったですね。」
「いえっ、あの。こちらこそ…。」
この人が、飛鳥を……?
つい不躾な視線を向けていたことに気付き、慌てて下を向く。
「は、はじめましてっ。裕木亜澄と申します。」
「せんせ、緊張し過ぎだって。」
「だって…。」
すっかり情けない声を出してしまった私を、八木君は安心させるかように小さく頷いた。