SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~



「まさか、お腹に赤ちゃんがいるなんて、考えもしなかった。」



情けない顔をした私を、気遣うように飛鳥は笑う。



「気付いた時にはもう、ね……。」



撮影中、ずっとお腹が張っていたらしい。


もともと不規則だった生理の周期。


そろそろかなって、朝からナプキンの用意をして。



「ずるってね、―――。」


「え…。」


「なんか、撮影中…変な感触が…。」



たんたんと、無表情に語る飛鳥が…痛々しかった。



「びっくりしたの。


自分でもびっくりするくらい…ね、血が…。」


「…っ。」


「そのまま気を失っちゃって…。」



すぐに救急車で運ばれた飛鳥が目覚めた時。


全ては終わった後だった。



「ママになった意識すらないの。


だけど、私の中にはちゃんと命が芽生えてて…。


もっと早く、わかってたらって…。」


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