SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
私は悔しかった。
何も気付いてやれなかった自分が歯痒かったし、飛鳥が一人で抱え込んでいたことがあまりにも大き過ぎて…何も言えなくなってしまったんだ。
「表向きは確かにそうなんだ。」
青藍さんの顔が、歪む。
「飛鳥ちゃんは…覆いかぶさってきた男を押し返すようにして、何とか逃げようと必死だった。
頭から血を流した男がこっちを振り返った時、僕はそいつを飛鳥ちゃんから離そうとベッドの下に突き落としたんだ。
だけど、――――。」
「…っ!!」
「体格の差からいって、僕の方が負けていた。
あいつは床に投げ捨てられた椅子を見て、自分が何で殴られたのか認識したんだ。
胸ぐらをつかまれて、突き飛ばされて。
あいつがゆっくりとパイプ椅子を握りしめた瞬間。
僕もそれで殴られるんだって、覚悟した。」