SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
すっと伏せた視線を追いかけて、私もそこに目を向ける。
「…だけど、殴られなかった。」
青藍さんの右手には、細く長い傷跡。
「飛鳥ちゃんが……。」
飛鳥の、左足の膝の裏の傷と同じような、痕。
「僕の上に落ちてきたそいつの頭は、べったりと血で濡れていた。
床に散らばったガラスの欠片を見て、飛鳥ちゃんが保健室に飾ってあった花瓶でそいつを殴ったんだって、わかった。」
「飛鳥がっ??」
「血の気の失せた顔で、でも…目だけはしっかり見開いて。
肩で息をしながら、ぐーっと唇を噛みしめてる姿を見た時、僕は男のくせに泣きそうになったんだ。
その時だよ、騒ぎに気付いた先生が戻ってきて。
ああ、これで助かったって…。」
「……っ!!」
「先生が駆け寄る前に、飛鳥ちゃんはそのまま崩れ落ちてしまって…。
足に怪我を負ってしまった。」