SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「青藍さん…。」
小さく息を吸い込んで。
私は真っ直ぐに、その穏やかな瞳に視線を向けた。
「飛鳥の…お腹の子ども…。
もしかして、父親は…あなたですか。」
飛鳥から、――――。
青藍さんの名前を聞いたことが、一度もなかった。
今日、ここで話を聞くまで、一度も。
「ああ。
僕たちは短い間だったけれど、ちゃんと付き合っていた。
恋人、として。」
「…っ。」
やっぱり、そうなんだ。
飛鳥は誰にも言えなかったんじゃない。
誰にも、言わなかったんだ。
自分の確固たる意志として。
「ちょっと、待っててくれるかな。」
そういって、青藍さんは立ち上がる。
入れ替わるように、八木君が部屋に戻ってくる。