SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「…タイミング、いいじゃん。」
ひねた言い方をする私を、おかしそうに笑う。
「先生、―――。」
「何よ。」
「いい事教えてあげよっか。」
「何よ、それ。別にいらないし。」
「まあ、お茶でも飲んでよ。」
そう言って、ガラステーブルの上に恭しくコップを並べる。
「葛西先生のことなんだけどな。」
「え…?」
怪訝な表情を見せた私に、八木君が首を振る。
「先生、葛西先生と別れようと思ってんの?」
「…っ!!」
別れようも何も、もう自分からは連絡できない。
「だって…。」
わかってしまったから。
大哉は私を愛してなんか、ない。
私は飛鳥の代わりになんか、なれない。
「あの人、俺が八木青藍の弟だって最初から知ってたんだよ。」
「どういうこと?」