SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「俺さ、入塾してからずっと、あの非常階段で休憩してんの。
先に来て、葛西先生を待つ亜澄ちゃんもいじらしくて可愛いよ?
でもね、―――。
先に戻っていく亜澄ちゃんを見ている葛西先生も、いい顔してんだよね。」
「え…?」
「亜澄ちゃんのことが愛しくてたまんないっつー顔、してんの。
デレ、だよデレ。
誰にも見られてないって思ってるんだから、あれは素だろ。」
混乱してきた。
大哉が私を、好き?
いや、そんなことはないと思う。
「まだ疑ってんの?もう、―――。」
八木君は大きな溜め息を吐きながら、ソファにもたれた。
「じゃあ、とっておき。
言わないでおこうと思ったのになあ。」
「な、何よ、もうっ。」
「これ以上、裕木亜澄に近付くなって言われた時ってさ、どういう状況だかわかる?」