SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~



「それは、この前みたいにすっごい剣幕で……。」


「あれは違うよ。あれは亜澄ちゃんがいたからわざとだ。」


「どういう…こと?」


「俺と話した時、あいつ全然怒ってなかったよ。むしろ冷静だった。」


「えっ。」


「裕木先生を、これ以上私情に巻き込みたくはないって。

葛西先生、そう言ったんだよ。

おれが八木青藍の弟だって、わかっててそう言ったんだ。

俺の成績のことも考えて、コースを変更してくれたのも葛西先生なんだ。

あの人が亜澄ちゃんにあんな態度を取るのには、理由があるんだよ。

飛鳥さんの時のように、失敗したくないんだ。

亜澄ちゃんを巻き込んで、不幸にしたくないんだよ。」


「あの…。」


「確かに飛鳥さんのことは忘れられない思い出なんだと思うよ。

でも、葛西先生にとって飛鳥さんはもう過去の人だ。

葛西先生が愛しているのは、亜澄ちゃんだよ。

だから、離れたんだよ。

優しさなの、わかる?」


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