SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「うわあー。
自力で頑張るしかないのかぁ。」
昼休み。
校舎と校舎を繋ぐ、渡り廊下。
私と飛鳥はいつもここでお弁当を食べていた。
「あ、亜澄の卵焼き、ちょうだい。」
モデルの仕事をしているからといって、飛鳥はダイエットなんかしていない。
私よりも大きなお弁当箱を抱えたまま、箸を伸ばして卵焼きをぱくつく。
「んーっ、亜澄ママの卵焼きは美味しいーっ。」
幸せそうにもぐもぐと口を動かす飛鳥を、恨めしそうに見上げた。
「んもう、何よー。亜澄が苦手なところは、教えたでしょー。
後は自分で頑張んなさいよ。」
「そうなんだけどさー。」
「もいっこ、食べちゃお。」
「ああっ、もう!!」
クラスメイトには見せない、こんな茶目っ気たっぷりの笑顔に、私も結局つられてしまう。
「電話してよ。」
「ええ?」
「数学なら、電話でも教えられるでしょ。」
「いいの?撮影は?」
「多分、こっちからかけ直すことになると思うけど…。」
「うん、待ってる。」
子犬のように、嬉しくて尻尾を振る、私。