SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「あ、笑うんだね。」
「失礼ですね。」
「ごめんごめん。まさか声をかけられるとは思ってなくて。」
「あ、いえ。」
「油断してた。」
そう言うと、ふはっと空気が抜けたように笑う。
「油断、ですか。」
「うん、僕も今声をかけようかなって。」
「あははっ、同じだったんだ。」
真っ黒な、まるで異次元に入り込んだような外の世界。
蛍光灯の眩さに、この保健室だけがリアルのような気がして。
奏多が迎えに来るまでの、ほんのわずかな時間。
私たちはお互いのアドレスを交換するまでに、距離が縮まった。
「先輩、どうやって帰るんですか?」
「迎えに来てもらうよ。」
『良かったら、一緒に乗って行きませんか。』
そのひと言が、どうしても言えなくて。
私はただ、ぎこちなく笑ってたっけ。