SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
葛西先生が家に来るようになって、私の成績は飛躍的に大進歩した。
清潔なイメージの大哉は、まずママに気に入られた。
飛鳥の紹介、従兄だからって、男の子が家庭教師に来ると知ったパパも、少し心配だったんだと思う。
初日には会社から早く帰宅して、大哉が帰る頃には家族はリビングで、待機。
ぎこちない一家団欒の姿に、私はこっそり笑ってしまう。
そんな緊張した私の家族に向かって、
「葛西大哉です。
亜澄さんの成績を上げられるように、頑張りますので、よろしくお願いします。」
と、大哉は爽やかな笑顔を見せ、頭を下げた。
勿論、家族みんなが大哉のことを気に入ったのは、言うまでもない。
受験までの、約2年間。
大哉は、私の家庭教師となった。
水曜日の夜と、土曜日の午後。
大哉の大学の予定に合わせて、週2日と決まった。
彼は毎週、私の家に通うことになる。