SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「健全なわけ、ないでしょ。」
クスクスと、唇に指を当てて。
いかにも可笑しそうに笑った…つもり。
先週からどうも、――――。
八木君には、調子を狂わされてる気がする。
「生徒と付き合えるわけ、ないでしょ。」
「受験が終わったらもう、生徒じゃないよ?」
「それに、私と葛西先生は、付き合ってなんかないし。」
「……嘘だ。」
「嘘なわけ、ないでしょ。
まあね、確かに知り合ってからは、長いかなあ。
高校時代の親友の、従兄、だからね。」
「従兄…?」
「そうなの。
知り合ってからは長いけど、葛西先生がここで働いてるって、全然知らなかったし。
もう何年も会ってなかったしね、びっくりしちゃった。」
「マジで、付き合ってないの?」
「そんなこと、あるわけないでしょ。
葛西先生、ご結婚されてるじゃない。」