いつまでも
「あの、こんにちは...」


誰かに話しかけられたようだ。
はっとして顔を上げる。


...イサワ トキ。


そこにあったのは、普段の無表情から大きくかけ離れた、笑顔だった。


見えなくなるほどブリッジを描いて細められた目。

右頬にだけある、小さなえくぼ。


一言で言うならば、可愛い。


私は思わず見惚れてしまって、うまく言葉が出てこない。

しどろもどろしてある間に、彼は再び口を開いた。


「はじめまして、イサワです」


男性にしては高い、顔に似合った可愛くてちょっと甘めの声だった。

色気とかセクシーとかそういう意味の甘い、じゃなくて、お菓子みたいな幼い甘さだ。


その甘さが余計に鼓動を加速させた。

なんとか息を吸って、落ち着かせる。
何か話さないと。


「...声、高いんだね」


結果、出てきたのはこれだった。
もう少し気の利いたことが言えなかったのか、今思い返しても我ながら情けない。
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