パズルのピースを繋いだら
「今度でいいよ、部屋片付けたら呼んで。」
「じゃあ一生無理だな。」
茶化すようににいっと笑った口元から、八重歯がこぼれる。綺麗にとんがった、三角の八重歯。
「もーう。だったら私掃除してあげるからさ。」
「そのうちな。」
駅が近付く。そのうちっていつ、とは訊けない。聡が私に会い続けるのは、私が物分りがいいからだ。
『本当は全部わかってんじゃねーの』
野方瑛の声が脳内で再生される。
「またね。」
「うん。」
その声を打ち消して、一度も後ろを振り返らない聡を見送った。栗色の神が人混みの中に見えなくなるまで、私は改札の前にしばらく突っ立っていた。