パズルのピースを繋いだら
「あ、今日財布忘れたんだった。」
駅の明かりが顔にかかりそうになった時、聡が急にそんなことを言い出した。
「え?行きはどうやって来たの?」
「これ。」
聡は尻ポケットから裸のICカードを取り出した。
財布がないことは気付いていた。Tシャツに擦り切れたジーパンという格好、聡は鞄を持ち歩かない。となれば所持品はすぐにわかる。もう片方の尻ポケットには携帯、それだけ。
「悪いけど、千円貸して。チャージしないと残金ないや。」
「うん、いいよ。」
そのやり取りが終わって、到着した。
券売機前は往来する人の流れで混み合っている。
「人多いからさ、あーりはここで待ってな。」
微笑んで差し出された手に、私は千円札を一枚乗せた。