パズルのピースを繋いだら
聡はきっといるだろう。何故か確信があった。
午前中にあのアパートに行ってみた。幸か不幸か、ちょうど引っ越しをしている最中だった。引っ越しセンターのトラックの前に聡の姿もある。
「聡!」
大声で呼びかけた。
聡が段ボールを持ったまま私を振り返る。顔面蒼白という言葉がぴったりの表情だった。
「私、全部知ってるから。」
あと数歩の距離まで近付いた。視界の端に、アパートの外階段の途中で足を止めるショートカットの女がいた。
「ばいばい、聡。」
ピアスの入った白い紙袋を力任せに投げつけた。八重歯は見えなかったけれど、その辺りを狙った。
踵を返して歩く。終わった。終わってしまった。
もう会うことはないだろう。栗色の髪にふれることも、八重歯を褒美のように感じることも、もう、ない。
真昼間なのに、私は泣いていた。