パズルのピースを繋いだら

「ふうん。」


瑛はそれだけ言うと、ギターを指で弾き始めた。ぽろぽろと、小さな音で。

隣の部屋に聡が来ることを瑛は知っていた。私と聡が歩いているところも見ていた。わかっていたのだ、最初から。


「瑛はあの女のことを、浮気相手、って言ってたけど、浮気相手は私だよ。先に向こうが付き合ってて、でも一回別れて、またヨリを戻した。本命はあの子だった。」


だって、聡は覚えていないだろうけれど、明日は聡と私の半年記念日。もう迎えることはない。

あーり、と呼ぶ人はもういない。


「瑛はさ、何で忠告したの?聡の二股を知ったとしても、他人ならどうでもいいやって思わない?」


また一粒、涙が落ちる。

頬の、雫の伝った部分が風に当たって冷たく乾いてゆく。夏が終わる。
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