パズルのピースを繋いだら

すぐに身を翻した聡は人と人の間をすり抜けて、見えなくなった。

ぽつん。改札の前で私は、右の手の平を眺めた。聡のか自分のかわからない、しっとり滲んだ汗で、きらきらと輝く。


「おまたせ。じゃ、行くわ。」

「ね、次はいつ会える?」


そのまま帰ろうとした腕を掴んだ。振り返った顔が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。


「バイトのシフトわかったら連絡する。」


おやすみ、と私の頭をひと撫でして、改札の向こうへ消えて行った。


「気をつけてね、おやすみ。」


背中に手を振った。

聡の乗る電車は、あと九分後に発車する。


< 6 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop