おててがくりーむぱん2
「待って、先生!」
光恵は白鳥先生の腕を必死に掴もうとしたが、意外と白鳥先生は足が速い。
どうしよう。
今、秘密を守るって、覚悟を決めたばかりなのに!
孝志が素早く、白鳥先生の前方に回り込む。先生が勢い良く孝志の胸にぶち当たった。
「待って。ほんとに。話を聞いて下さい」
孝志は白鳥先生の肩をつかんで、顔を覗き込んだ。
白鳥先生の顔は紅潮し、涙目になっているのが見える。光恵の心臓が、嘘をついていた罪悪感で締め付けられた。
「おかしいと思ってたのっ」
白鳥先生は髪を振り乱し、声を荒げた。
「鈴木さんはBMWに乗るようなタイプじゃない。手堅く国産車を選ぶような人だわ! だからしっくりこなかった」
「先生、ちょっと、声を小さく」
孝志がささやくように伝えても、白鳥先生の激情は止まらない。
「佐田さんなら、この車。納得いくわ。ああ、やっとすっきりした」
吐き捨てるように言った。
「佐田さんと結婚? 皆川先生、どれだけラッキーなの? ああ、ほんと、信じらんないっ」
先生はぷいっと横を向いた。
「白鳥さん、嘘をついて、本当にすみませんでした」
孝志は頭を下げた。先生は孝志をちらりと見ると、再びぷいと横を向く。
「彼女を守るためなんです。今はまだ、みんなに知られる訳にいかない」
「……」
「どうか、誰にも言わないでください」