おててがくりーむぱん2
光恵は返事をせずに、背中を向ける。デスクの中のものを、鞄にとにかく詰め込んだ。
ここから逃げなくちゃ。
早く、こんなところから。
鞄を手に取り振り向くと、白鳥先生がじっとこちらを見ていた。
光恵の中に、感じたことのないような怒りが溢れてくる。
こんなことをする人だと、思わなかった。
真正面からじゃなく、こんな卑怯な手を使って。
光恵は白鳥先生の前に立つと「こんなひどいこと、よくできますね」と言った。冷たい言葉の先が、少しでも白鳥先生の胸に突き刺さればいいと願って。こんなに人を傷つけたいと思ったのは、初めてだ。
白鳥先生は冷たい視線を返してくる。
「人の携帯を見て、写真を勝手にネットに投稿するなんて、犯罪ですよ」
「わたしがやったって証拠はないわよ」
「だって、他に誰がいるんですか? わたしの携帯にさわれて、彼のことを知っているのは、白鳥先生だけです」
そこでくすっと先生が笑う。
「パスワードが、佐田さんの誕生日だなんて、抜けてるにもほどがあるわ」
「ひど……い」
光恵は鞄のストラップを握りしめた。
「秘密にしたかったら、写真を撮ったり、二人で外出したりしちゃいけないのよ。そんな覚悟もなくて、よく結婚するなんて言うわよね」