おててがくりーむぱん2


都内のホテルの一室に缶詰になった。
老舗ホテルの絨毯はふかふかで、ここでも寝られるんじゃないかと思うほど。


大きな窓からは、東京の灰色の町並み。太陽は夏に劣らず輝いていて、孝志の真っ暗な心に痛いほど突き刺さった。


ミツ。
会いたい。


孝志はベッドにごろりと転がる。光恵が今どんなに心細くしているのかと思うと、いてもたってもいられない。


携帯は取り上げられたので、電話をかけることができない。ホテル備え付けのノート型コンピュータは、茶色のがっしりしたデスクの上においてあるが、光恵のメールアドレスがそもそも分からない。全部の情報が携帯に入っているのだ。


孝志は枕を掴んで、ぎゅうーっと抱きしめる。この気持ちをどうやって消化させればいいのか。
テレビをつけてドラマの再放送を流す。でも頭に入ってこない。ミツのことでいっぱいだからだ。


孝志は立ち上がり、つるつるに磨かれたデスクに座り、コンピュータを立ち上げた。Yahoo!のサイトを開くと、トップニュース記事に、自分の写真が掲載されているのが目に入った。


「佐田孝志、ベッド写真の波紋」


孝志は頭をかかえた。


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