おててがくりーむぱん2
4
これはただのデジタル情報で、インターネットを通じて目の前に現れている、ただそれだけなのに。彼の言葉だと思うと、愛しさがこみあげる。コンピュータの画面に映し出される孝志のメールを、指でそっとなぞった。
「会いたいよ」
「うん、すごく」
文字だけで伝える気持ちは、もどかしくて切ない。
いつごろ、この騒ぎは治まるのだろう。ネット上には相変わらず酷い言葉が連ねられる。孝志も事務所も無言を通しているので、世間は憶測で盛り上がる。でも何も言わないのが得策だ。今回流出した写真は、言い訳することのできないもの。ついでに光恵の評判がすこぶる悪い今、交際宣言をする訳にもいかない。
ただじっとして、嵐が過ぎ去るのを待つばかり。
「別れちゃえ」
「孝志を返して」
そんな言葉を目にすると、別れることが一番の解決なんじゃないかと思ったりする。
できない。
そんなこと絶対にできない。
孝志がいない人生を想像すると、凍えるような寒さを感じる。身体を流れる暖かな血液が瞬時に凍ってしまうくらい。
こんなにも彼のことを好きだったんだ。