おててがくりーむぱん2
「お父さん……」
沈黙を破って孝志が口を開きかけた時、リビングの扉が勢いよく開いた。
「あっつい。ママ、飲み物ー」
振り向くと、大学四年の春恵が、Tシャツにジーンズという気楽な格好で入って来た。目は手元のスマホ画面を見続けている。
「こらっ。お客さんがいらしてるのよ」
母親があわてて春恵に言った。
「あ、すみません」
驚いた春恵が、目を上げて孝志を見た。
「いえ、大丈夫ですよ」
孝志が言うと、春恵の動きが止まった。目を大きく開いて、孝志を凝視する。
「はる……」
光恵が話しかけようと、腰を上げたそのとき、
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
リビング中に春恵の叫び声が響き渡った。
「春恵、落ち着いて。うるさいから」
光恵は春恵に駆け寄り、口を塞ごうとした。
「なんで? なんで? なんでここにいるの?」
顔を紅潮させて、過呼吸ぎみの春恵が、孝志を指差した。