おててがくりーむぱん2


秋の空気が緩やかに流れる。周りの畑から夏の野菜が消え始めた。


実家には、佑司が送ってくれた。こんなに甘えていていいのかと自問自答しながら、結局頼ってしまった。光恵は、佑司のTOYOTAのセダンを見て、白鳥先生の言葉を思い出す。すごく嫌な気持ちを味わいながらも、彼女の観察眼に驚いた。確かに、佑司は国産車を選ぶ。


「あら、鈴木さん」
玄関まで迎えに出た母親が、佑司の姿を見て驚いた声を上げた。


「お久しぶりです」
「本当に……ご無沙汰しています」
母親が頭を下げた。


家に入ると父親がリビングに座っている。光恵の顔を見ると「おかえり」とぼそっと小さな声で言った。


「ただいま」
光恵は申し訳なくてうつむく。佑司は光恵の背中をそっと押して、ソファに座らせた。


「鈴木さん、送ってくださってありがとうございます」
「いえ、いいんです」
佑司が優しそうな笑みを浮かべて答えた。


「佐田さんは、どうしてる?」
父親が腕を組みながら訊ねた。


「今、ホテルに缶詰にされてる」
「そうか……」
父親そう言うと眉をひそめる。


「光恵を幸せにすると言ってたのにな」
「お父さんっ」
母親が父親の言葉を遮るように呼びかけた。


「なんだ?」
「その話は、今はいいじゃない。ね?」
「……」
父親が黙った。


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