おててがくりーむぱん2
彼女が一歩下がる。
あ、帰ってしまう。
行ってしまう。
孝志はMCの言葉に相づちをうちながら、視界の隅で光恵を見つめ続けた。
あれ、誰かとしゃべってる。
あの女性は、誰だ?
女性が光恵を掴んだ。
思わずスツールから立ち上がる。
「佐田さん?」
MCがいぶかしげに訊ねた。
周りがざわつき始める。
混乱が起こる前の、一瞬の緊張感。
女性が光恵を殴ろうと、手を振りかざしたのが見えた。
頭の中が、真っ白に光る。
「光恵っ」
気づいたら、孝志はステージから飛び降りていた。
必死に人をかき分けて、光恵の元に走る。
悲鳴とフラッシュ。
群衆にもみくちゃにされながら、孝志は光恵にたどり着いた。