おててがくりーむぱん2
父親は怪訝な顔で、春恵と孝志の顔を交互に見る。それから「失礼ですが、お仕事は何をされているんですか?」と訊ねた。
「ちょっと、おとーさん、何馬鹿なこといってんの?」
興奮した春恵が、父親の隣にどさりと腰を下ろす。
「俳優じゃないっ。 大河、出てたよ!!」
「大河ドラマ?」
「そうそう。ほら、最後死んじゃう……。お父さん、感極まってたんじゃんっ」
「ん?」
父親は再び孝志の顔を凝視する。それから「ああ」と声をあげた。
「失礼しました」
父親が頭を下げた。
「いえ、見ていただけただなんて、光栄です」
孝志が笑った。
「で、うちの娘と……結婚?」
「はい」
父親は黙った。
「マジで? おねーちゃん、どうやったの? 信じらんなーい」
空気を読めない春恵のテンションは、最高潮だ。
「佐田孝志がおにいちゃん? やだっ、どうしよっ」
春恵はそう言うと、先ほど放り投げたスマホを床から拾い上げる。
「自慢しなくちゃ。やば、ラインで祭り始まっちゃう!」
光恵は「あ!」と言って、身を乗り出して春恵の手からスマホを取り上げた。
「駄目! 誰にも言わないで!」