おててがくりーむぱん2
二人の未来
1
真っ暗な部屋。よれよれの毛布に足を絡ませて、三年前に公開されたハリウッドの映画を見る。枕の脇に手を伸ばして、ポテトチップスの大袋を胸元に引っ張り込んだ。
孝志は空の袋をごそごそとかき回すと、「あ、もうないや」と言って、足下に放り投げる。それから、ベッドサイドの冷えてないコーラを、ごくごくと飲み干した。
「うまいなあ、やっぱ」
孝志は目を閉じて、お腹をぽりぽりとひっかいた。
もう三週間も筋トレしてないし、走ってもいない。世の中の騒がしさをシャットアウトして、このマンションにずっとこもっていた。
「いいんだ、どうせ、俺、暇だし」
孝志はふてくされたようにそう言うと、自分の携帯を取り出し、じっと見つめた。
どんな話をするにせよ、光恵に電話をしなくてはならない。それは分かっているけれど、できなかった。
恐ろしすぎる。
「ミツ、どうしてるかな」
孝志は自分の油っぽい枕を抱きしめた。
彼女を幸せにするはずが、ひどく傷つけてしまった。
彼女の涙。
「俺、何やってんだ」
新しいポテトチップスを床に転がるコンビニの袋から取り出す。勢い良く封を開けて、再びぱりぱりと食べだした。