おててがくりーむぱん2
「寂しいさ、そりゃ。でもあいつがここで待ってるって思うと、力も湧くよ」
「……」
「それが夫婦。一緒にいたいから、何かをあきらめるなんて、お子様の恋愛だ」
「そっか……」
「相手が懸命に頑張って、その結果最高の笑顔を見せてくれたら、いいなって思わないか?」
「そう……ですね」
佐々木は照れくさそうに頭をかくと「えらそうなこと言っちゃったな」と笑う。「これで離婚なんてことになったら、いい笑いもんだ」
孝志もつられて笑みをを浮かべた。
「お前も一緒に行かないか?」
佐々木が言った。
「俺も?」
「お前、ここでくすぶってても仕方ないだろう?」
「そうですね……」
「日本で仕事ができないなら、外でやるんだよ。お前、すごい役者だよ。まだまだ上を目指せる。おっきくなれる。それなのにここでふてくされて、お菓子ばっか食べてそんなに太ってんじゃ、もったいないぞ」
海外?
俺が?
光恵と離れて?
グラスを持つ手に、少し力が入る。
また仕事ができるかもしれない。
そう思うと、初めてアルコールに酔った日のように、心臓が跳ねて、顔が熱くなる。
でも。
でも。
でも。
彼女と離れてしまうなんて、耐えられない。