おててがくりーむぱん2
「俺よりイイ男だったから、口惜しかったのかな」
茶化すように笑う。
「あの人も憎めない人だ。途中から自分でもどうしたいのか、分かんなくなって来ちゃったよ。ただ、随分と子供っぽい人だし、夢見ごこちのところがあったから、光恵が幸せになれるのか心配だった」
光恵は笑みを浮かべて「ありがとう」と言った。
「光恵、どうしたい?」
「……わかんないわ。ただ、あの人から仕事を奪ってしまったことが、辛くて」
「うん」
「彼、本当に最高に素敵なのよ。ライトの下に出ると、誰よりも輝く。みんな彼から目が離せなくなる」
「そうだね」
光恵は婚約指輪を指でくるりと回した。
「ネット上に、孝志と並べると思うなんて、おこがましいって書いてあったの」
「そんなの気にするなよ」
佑司が優しく肩を撫でた。
「ううん。自分でもきっと、そう思ってたの。彼と付き合いだしてから、書くのを辞めた。彼と比べて評価されるのが、怖かったんだわ」
「……」
「馬鹿みたい。そんなこと気にして」
光恵は「ね」と、佑司を見て微笑んだ。
「俺、書き続ける君が、好きだったよ。みんなが就職活動している間も、光恵はずっと書いてた。お化粧なんかしないで、髪を一つにまとめて、ただただコンピュータに向かって、真剣に。とても幸せそうだったし、それに、誰よりも輝いてた」